コラム

Food EXPO Kyushu<国内外食品商談会>フードアカデミー 会議録(前編)

<九州の食の未来を語り合う>

第1回フードアカデミー

 

福岡商工会議所・福岡県・福岡市・福岡県商工会連合会・ジェトロ福岡・福岡地域戦略推進協議会 の6団体で構成する Food EXPO Kyushu 実行委員会は、九州の農林水産業、食産業のさらなる発展と地域経済の振興を目的として本年6回目となる「Food EXPO Kyushu(国内外食品商談会/九州うまいもの大食堂)」を10月に開催します。

 今年は、さらに情報発信機能を強化すべく、食品業界の「トレンド」や「マーケット動向」に関する意見交換と学びの場として新たに「フードアカデミー」を開催することになりました。ここでは、去る8月5日に行われたフードアカデミーの様子をダイジェストでお届けします。

 

<総合司会>
Food EXPO Kyushu実行委員会 実行委員長 川原 正孝

 

Food EXPO Kyushu 実行委員会 委員長

川原 正孝

 

今年もFood EXPO Kyushuの開催が近づいてきた。BtoB と BtoC、双方で、九州の食産業を発展させていくために、今年はさらに情報発信の機能を強化したいと考えている。

各分野の方々とともに、食品業界の最新情報を収集し、食品関連企業のマーケティングへの活用や新商品・新サービス開発の参考にすべく、このフードアカデミーを開催する。登壇者のみなさんと、来場者のみなさんとで、様々な情報を共有し、意見交換することで、新しいアイデアを生み出す場にもなればと思っている。

 

♦登壇者自己紹介

 

(株)三越伊勢丹 プロモーション商品部食品バイヤー

鈴木 雄大氏

 

2006年三越に入社。紳士・婦人服を経て、入社3年目から食品部門。生鮮食品、和洋菓子、グローサリーなどを経て2017年に九州物産展の担当バイヤーに。

全国で九州物産展を展開し、九州の食の魅力を発信しつづけている。

 

㈱岩田屋三越 食品・レストラン営業部食品催事バイヤー 

佐藤 克美

 

1995年、当時の株式会社岩田屋に入社。岩田屋本店、福岡三越、岩田屋久留米店、郊外のサテライトショップ15店で、催事のバイヤーとして活動。

国内だけではなく海外からの顧客が増える福岡で、新しいこと、もの、ひとを生み出す売り場づくりをめざしている。

 

(株)シティ情報ふくおか 編集長 

古後 大輔


1991年に株式会社シティ情報ふくおかに入社。発行43年目を迎える雑誌「シティ情報ふくおか」の編集長。今、福岡の街は過渡期だと思う。

街の変革は食の変革でもある。それを歩いたままの視点でとらえ、発信したい。


 

(有)法本胡麻豆腐店 代表取締役

法本 憲一郎氏

 

長崎県佐世保市にある昭和27年の創業の胡麻豆腐専門店の3代目。佐世保市内の小売店が減り、売上げが落ちる中、長崎の胡麻豆腐文化を背景にもつこだわりの胡麻豆腐の新たな販路を求めて、関東、関西へ進出。

全国の有名百貨店への卸だけではく、現在は海外への展開も目指している。

 

(有)アルファー 取締役

安部 史哉氏

 

福岡県宮若市で、「竹千寿」というブランドで、おこわ・ちまきの専門店を営んでいる。主に、産地直送のギフトとして、お歳暮、お中元、祝い事などで需要あり。

現在の業態となって9年目、妻がレシピ開発、自身が営業と販売を担当。

Food EXPO Kyushuには、BtoB<国内外食品商談会>、BtoC<九州うまいもの大食堂>ともに初年度から6年間連続で出展。

 

 

♦ディスカッション1♦

それぞれの立場から考える九州の食の魅力

 

鮮度の良い食材が豊富に揃う地域

(株)三越伊勢丹 鈴木 雄大氏

 

県外からの目線で見ると鮮度の良い食材が豊富に揃うという点ではおそらく日本で一番ではないか。まだまだいい素材が眠っているように感じる。地元の人にとっての当たり前は、実は東京では当たり前ではない、ということに気づいていい。

また、福岡は九州の中心として、いろんな人を受け入れてきたからこその食文化があるように感じる。屋台や角打ち、人と人とのつきあいの中から生まれた魅力的な食があるのではないか。

 

驚きの仕掛けで九州の食の魅力を発信

(株)岩田屋三越 佐藤 克美

 

最近感じるのは、当たり前のいいものの中でも、さらにいいものがほしいというニーズ。売り場で「この中でいちばん高いのどれ?」と聞かれる。季節外れの岩手の松茸も、宮崎の初ゼリのマンゴーも、佐賀の走りのハウスみかんも岩田屋に並び、誰が買うんだろうというような、うん十万の値段でも売れていく。それを踏まえ今3つのニーズがあると感じる。

 

①高くてもいいものを買いたい。

②この人だから、この産地だから買いたい。

③こんな快適な売り場環境で買いたい。

 

 物産展も、今までは博多といえば明太子、ラーメン、水炊き、おきうと、があれば成立していたが、最近は、それだけでなく、もう一工夫手をかけることを心がけている。

例えばイタリア展ならば、オリーブオイルやピザなどの定番商品に加えて、有名シェフと県庁、産地の協力を得て、大木町のきのこのピザや、朝倉の水前寺海苔とカラスミのパスタ、日田の梨にバルサミコをかけて食べるジェラートなど驚きの仕掛けで九州の食の素晴らしさを表現する。

「当たり前だったものがこうなるんだ!」というものが喜ばれている。中洲のバーや、道の駅に出店してもらうなど、百貨店の枠にとらわれずに、多面的に九州の魅力を発信したい。

 

人と人との想いをつなぐ食文化

(株)シティ情報ふくおか 古後 大輔

 

 「シティ情報ふくおか」は、情報誌として43年という長い間発行しているが、出版不況と言われる昨今、ちまたに出回る食情報も少し変わってきた。

おいしい明太やラーメンはどこで、いくらで売ってる。というような情報はSNSでどんどん発信される。最近は、「同じチェーン店でもあの大将が作ると旨い」「あのラーメン屋は麺から食べると出てけと言われるらしいけど、実際どうなの?」などの声が読者から届き、取材してみると、実はとても魅力的な大将だったり、実際は気むずかしい人じゃなくて、麺へのこだわりが強い人だったりする。

 

 これからは、やはり「人」なのではないか。人と人との想いをつなぐのも食。だからこそ、ラーメンも、めんたいも、餃子も、その背景にはヒーローになれる作り手がいる。その作り手を育てていくことが大事。

 今の流行としては、タピオカ、食パン、カレーなどあるが、昨今流行のサイクルは、短く、文化としては根付かない。九州の食の発信においても、表層的になりすぎないこと、人の魅力を発信していくことが大切だと考える。

 

左から (株)三越伊勢丹 鈴木 雄大氏、(株)岩田屋三越 佐藤 克美氏、(株)シティ情報ふくおか編集長 古後 大輔氏

 

独特の食文化が形成された長崎の食文化を世界に発信

(有)法本胡麻豆腐店 法本 憲一郎氏

 

 長崎の食を語る時に、「和華蘭(わからん)文化」という言葉がある。日本、中国、オランダ、3つの国を表す「和」「華」「蘭」と「わからない」をかけている。江戸時代の唯一の開港地であり、いろんな人との交流があったので、わからないほどに混ざり合い、独特の食文化が発達した。「ちゃんぽん」も、もともと混ぜるという意味。

 胡麻豆腐屋の話をすると、胡麻豆腐は二つに分類される。一つが、空海が伝えた高野山系のクズと生ゴマを使った真っ白なもの。二つ目が、江戸時代にはじまった全集の一派、黄檗(おうばく)宗系。

これが、焙煎した胡麻と砂糖を使うもので、僧侶隠元が、中国から長崎の興福寺にもってきたもの。私が作っているものは後者。長崎でいう胡麻豆腐もこちらになる。関東、関西に伝える時も、その違いを伝えるのに苦労した。

 

海外ではなおさらで、海外の豆腐のイメージは大豆からできたものなので、胡麻豆腐という名前ですすめると、みな食べて「ハテナ?」という顔や、嫌な顔をする。

そこで、Japanese プリンとして、きな粉や黒蜜をかけて提供してみた。長崎の胡麻豆腐の製法は、和菓子と一緒だから。すると、おいしいおいしいとみなさん食べてくれた。売りに行って現地に学ぶことは本当に多い。自分たちも売ることでその地域のことを知ることができる。

長崎のごま豆腐は、東京でも最初は認知度がなく、苦戦したが、想いをもって伝えることで販路を開いてこれた。食べ物は10人のうち3、4人が美味しいと言ってくれれば、海外でも通用するというのが持論。そして、商品の説明と一緒に、地域性や文化、背景を伝えることで、おいしさはかわってくる。

 

私自身も、原料と生産者のことを学んで、胡麻豆腐づくりへの関わり方が変わった。国内の胡麻は、99%が輸入で、主な産地はアフリカ。収穫がとても大変であることもわかった。しかし長崎の胡麻豆腐にこだわりたいと、五年前から栽培を始めた。

1年目は芽も出ない。2年目はイノシシにやられる。3年目は台風に見舞われた。それでも「佐世保で胡麻をつくるバカなやつがいる、面白い」という人が集まり、来年には農業生産法人と組んで作ることになった。人とのつながりをつくり、一歩を踏み出せるかどうか。まわりの人の思いや助けでいろんなことができるんだなということを実感している。

 

オール九州の素材でつくる「九州の贈り物」

(有)アルファー 安部 史哉氏

 

おこわとちまきを作っているので、商品開発の視点から九州の食の魅力について考えてみると、やはり九州の外の人を中心に、素材に魅力があるとよく言われる。魅力的な素材をどういうふうに魅力的に伝えていくかが、開発の時にも重要。

たとえば、おこわやちまきでは、「豚の角煮」「鶏ごぼう」、という商品で九州の郷土食を。「うに」「うなぎ」は高級感あるラインナップ、「栗」「さつまいも」といった季節感のある商品も季節に合わせていれていくなど、いろんな見せ方ができる。

 

福岡県の宮若市という地方の小さな会社が、「九州の贈り物」という形で、販路をつくっていけているというのは、福岡だけの魅力ではなく、九州全体の魅力を商品から感じてもらっているのではないか。

 商品開発においては、受注者の要望に応えて受け身で作ることも多い。県内や九州内の事業者や生産者が、素材を持ち込んで相談に来られることもある。県外からの要望にも、オール九州の素材で応えることができるのも強み。

 

左から (有)法本胡麻豆腐店 法本 憲一郎氏、(有)アルファー 安部 史哉氏、福岡商工会議所 里見洋輔

 

>>後編へ続く

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